安全管理の動向

平成29年4月14日の法律改正のポイント

1. 「危険時の措置」の充実強化

日本で対象となる事業者は限られる。広島大学の施設は対象にならないと推測されるが、引き続き注視していく必要がある。

2. 放射性同位元素に対する防護措置

対象となる放射性同位元素

密封線源  1000D≦(区分1)、10D≦~<1000D(区分2)、D≦~<10D(区分3)

非密封線源でもD2値を用いて密封線源と類似の区分があるが、広島大学の施設の放射性同位元素は対象にならないと推測される。

特定放射性同位元素の見直し

防護措置と線源登録制度の対象との整合性を図る観点から、放射能/D値が1以上の線源を線源登録制度の対象に追加予定

防護措置の内容

区分に応じて、検知、遅延及び対応等の基準に基づいた防護措置が要求される。

防護規程

防護措置を体系的に実施するため、放射性同位元素防護規程を放射線障害予防規程とは別に作成し、原子力規制委員会への届出が要求される。

防護規程は、事業者における防護措置の内容を体系的に記載する文書であることから、必要な関係者以外に情報が漏洩することのないよう、厳格な管理が必要である。

防護管理者

事業者が行う防護措置について監督を行わせるため、放射性同位元素防護管理者を工場又は事業所ごとに選任し、原子力規制委員会への届出が要求される。

<防護管理者の要件>
  • 放射性同位元素防護管理者は工場又は事業所において放射性同位元素の防護に関する業務を統一的に管理できる地位にある者
  • 放射性同位元素の取扱いに関する一般的な知識を有する者
  • 放射性同位元素の防護に関する業務に管理的地位にある者として一年以上従事した経験を有する者又はこれと同等以上の知識及び経験を有していると原子力規制委員会が認めた者

防護管理者の資格要件を満たすための講習会は、原子力規制庁又は登録定期講習機関が実施予定

選任された防護管理者には、定期的な受講を義務づけ、防護管理者の資質の維持及び向上を図る予定

3. 安全文化・品質保証

予防規程の中に放射線障害を防止するため、PDCAサイクルと自らの活動を評価する組織を定めることとし、予防規程や関連規定の見直しをすることが要求される。

予防規程に定める要求内容については、平成29年度中に明確化される予定。

国際免除レベルの法令への取り入れ(平成17年6月)

国際基本安全基準(BSS: Basic Safety Standards)の法令への取り入れ

参考文献(詳細はこれらを参照)

  • 中国・四国地区放射線安全研修会テキスト(2003年10月)(日本アイソトープ協会主任者部会中国・四国支部、大学等放射線施設協議会中国四国支部)
  • 国際免除レベルの法令への取り入れの基本的考え方  中間報告書(平成15年8月 放射線安全規制検討会 文部科学省 科学技術・学術政策局)

変更理由

国際基本安全基準(BSS)を国内法令に取り入れるためいろいろな国での整合性を図るため(RIの貿易で重要)

A. 国際免除レベルの法令への取り入れ

1. 規制対象の見直し

現行: 密封・非密封の別や半減期等でグループ分けし、放射能及び放射能濃度を規定(「定義数量」)

改正案: 765核種の核種ごとに国際免除レベルを導入

1-1. 密封線源の規制

(1) 現行

一律3.7MBqを越えるものを規制

届出 :3.7GBq以下のもの

許可 :3.7GBqを越えるもの

(2) 改正案

規制となる濃度、数量は核種に依存

原則
免除 免除レベル以下
型式承認 国が指定した一般消費装備機器(表面から10cmで1μSv/h)
対象: イオン化式煙感知器、切替放電管(レーダ受信部)、熱粒子化センサ、集電式電位測定器
設計承認 免除レベル~免除レベルの1000倍で国の設計承認をとったもの(通常の使用で裕度を持って1mSv/y)
対象: ガスクロマトグラフ用ECD、モニタ動作試験用線源、液体シンチレーション測定装置用線源、エアロゾル中和器、厚さ計、膜厚測定器、校正用線源
新届出 免除レベル~免除レベルの1000倍
対象: 液面レベル計、γ線密度計、水分密度計
許可 免除レベルの1000倍を越える
1-2. 非密封線源の規制

(1) 現行

4群に分かれた定義数量(濃度は一律)を越えるものの使用等は許可対象

(2) 改正案

数量、濃度ともに国際免除レベルを導入

2. 規制体系の見直し

現行: 定義数量の1000倍で密封線源の届出と許可の区分

改正案: 国際免除レベルの1000倍で密封線源の届出と許可を区分

現行: 設計承認(1機種のみ)に加え、全数検査(「機構確認」)

改正案

:設計承認(対象を拡大) 「機構確認」を廃止

設計上の安全性が十分確認できるものに限り、施設規制と行為規制を新届出よりも適宜合理化した規制(場や被ばくの測定の免除、放射線取扱主任者を選任することの免除など)とすることが適当

:型式承認(新設) 使用者は届出不要

製造者の行う設計についての安全性が確認できれば、使用者に対して施設規則や行為基準を課すことは必要でないと考えられる。

B. 国際免除レベル取り入れに関連する事項

1. 放射線取扱主任者の見直し

現行: 第1種及び第2種放射線取扱主任者免状

改正案: 第1種及び第2種放射線取扱主任者免状に加えて、新届出対象の密封線源のみを使用する事業所を対象として第3種免状を新設

現行: 主任者に再教育の義務無し

改正案: 主任者に一定期間ごとの講習を義務づけ

医師等を無条件に主任者に選任できる制度

科目を限定した試験講習による資格(第1種医療用主任者)を含め継続的に検討

2. 検査制度の見直し

現行: 定期検査は施設の技術基準の適合性(ハード面)を対象

改正案: 定期検査に安全管理の行為基準(ソフト面)を追加

  立入検査: 事故時や問題事業所への抜打検査に重点化

3. 国以外の機関が実施する業務

BSSの取り入れにより規制対象が大幅に増加するため

具体案
  • 引き続き国以外の機関を活用するもの
    検査業務、試験業務、講習業務、運搬物確認、運搬方法確認(国土交通省所管)
  • 廃止するもの
    機構確認
  • 新たに国以外の機関を活用するもの
    規制代行業務(簡易な届出などを処理) 申請方法、申請書内容への指導、助言

4. 移動使用の規制

許可使用

移動使用の都度、使用場所等を届出

具体的な使用場所の届出が必要

新届出使用

使用環境、主たる保管場所等について事前に届出

移動使用の実施状況の記録の義務づけ

具体的な使用場所の届出は不要

設計承認

製造者に対する設計承認時に使用環境をあわせて確認

使用者からの届出においては、主たる保管場所等について事前に届出

具体的な使用場所の届出は不要

5. 医療分野における規制(厚生労働省との連携)

対応の可能性の高い部分から段階的に取り組む

二重規制の改善等に取り組む

短半減期核種の固体廃棄物の取扱いに取り組む

6. 放射線発生装置の新たな管理のあり方

  • 電源を切った状態で、放射化による影響がほとんどないこと、誤操作による電源が入ってしまう可能性がないこと、などが信頼性を持って確認できる場合は、管理区域の一時的な解除を可能とすることが適当
  • 使用(調整運転を含む)前に放射線障害予防規定の届出と放射線取扱主任者の選任を行うよう法令に明記する必要がある
  • 放射化物の取扱いに係る課長通知は、基本的に放射化物の安全管理を求めるもので、放射化物の取扱いや使用についてまで安全確保のあり方を示しているものではなく、今回の放射線障害防止法改正の際に放射化物に係る安全確保について所用の法令整備を行うことが適当

7. RI廃棄物等の埋設処分(今後の検討課題)

現行: 埋設処分の規定なし

改正案:法律上埋設処分を可能にする

8. 新規制の遡及

  • 遡及適用する
  • 移行期間を十分にとる
      その間に届出や許可申請等を行う
  • 法律改正の趣旨、内容等を周知徹底する
      関連ホームページの拡充
      関係団体への説明会等の実施

原子力規制委員会 ホームページ

http://www.nsr.go.jp/

第40回国立大学アイソトープ総合センター長会議 ホームページ

http://home.hiroshima-u.ac.jp/ricentr/old_hp_until170820/ht/40thSite/index.html

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